近年、製造業においてAIの活用が進んでいます。中でも外観検査AIは、生産ラインにおける品質管理を効率化し、生産性向上につながる最新技術として注目を浴びております。
AIはなんでもできる…実は、そうではありません。外観検査の自動化を進めるためには、画像処理センサとの違いやプロジェクト進行のポイントを抑える必要があります。
本記事では一般的なAIの種類や外観検査AIのポイントを紹介します。
| AI(人口知能)とは
AI(人工知能)は、コンピューターや機械が人間の知的活動を模倣する技術です。この技術は、データの分析、学習、そして複雑な問題の解決を可能にします。AIは製造業界において、品質管理、効率化、そして自動化を推進する重要な役割を担っています。特に外観検査の分野では、AIの精度とスピードは従来の方法を大きく上回る可能性を秘めています。
| AIの種類
◯弱いAIと強いAI
AIは、実現可能性と適用範囲に基づいて「弱いAI」と「強いAI」という二つのカテゴリに大別されます。
弱いAI(Narrow AIまたはSpecialized AI)は、限られた特定のタスクを実行するように設計されたAIです。これは、チェスのプレイ、言語翻訳、音声認識など、限られた領域で人間と同等またはそれ以上のパフォーマンスを発揮します。しかし、これらはそのタスク外では機能しないため、その知性はあくまでシミュレーションされたものに過ぎません。
対照的に、強いAI(General AI)は、自己意識、理解、感情など、人間と同等の知的能力を備えるAIを指します。このAIは、あらゆる知的タスクにおいて人間のように振る舞うことができるとされています。しかし、このようなAIは現在の技術ではまだ実現されておらず、多くの科学者や研究者によって追求されている未来の技術です。
この文脈で、ChatGPTを含む現代のAIモデルは「弱いAI」に分類されます。ChatGPTは自然言語処理において高度なパフォーマンスを示しますが、それは特定のプログラミングされたパラメーターとデータセットに基づいています。ChatGPTは人間のように自己意識を持つわけではなく、また一般的な知的タスク全体にわたって適用可能なわけではありません。
しかし、その学習と応答の精度は、特定の範囲内で人間の言語能力を模倣し、多くの場合、それを超越しています。ChatGPTは弱いAIに分類されるものの、それは特定のタスクにおいて非常に強力であると言えるでしょう。
| 製造業における外観検査
◯品質管理の重要性
製造業における品質管理は、製品の安全性と信頼性を保証し、顧客満足度を高めるために不可欠です。高品質な製品は、ブランドの評判を高め、市場での競争力を強化します。外観検査は、製品が出荷される前に最終的な品質チェックを行う重要な工程であり、微細な欠陥や不具合を発見することが可能です。
外観検査は、製品の表面の傷、色の不均一性、形状の誤差など、製品の品質に影響を及ぼす多くの要素を検査します。この工程は、製品の品質基準を満たしているかを確認し、不良品が市場に流通するのを防ぐために不可欠です。
◯目視による外観検査の課題
従来の目視による外観検査にはいくつかの課題があります。人間が行う検査は、疲労や主観的な判断によって一貫性が欠けることがあります。また、微細な欠陥を見逃すリスクも高く、大量生産される製品に対しては時間とコストの面でも非効率です。また、検査員の方によって検査基準が一定でないケースも多く、品質の不安定になるケースもあります。
| 外観検査AIと画像処理センサの違い
従来の画像処理センサは、特定のRGB値やピクセル数に対して閾値を設定し、これを基準に製品の合否を判断します。明確な基準が設定できるシンプルな外観検査においては効果的ですが、製品の個体差が大きい場合や、より曖昧な判定が必要な状況では、その性能に限界があります。
一方、AIによる外観検査では、膨大な画像データから特徴を学習しているため、画像処理ではノイズになりがちな微妙な色や形状の違いといった個体差を認識し、必要に応じてその違いを正常とも異常とも判断ができます。また、単一のアルゴリズムだけでなく、複数のアルゴリズムを組み合わせることで、さまざまな外観のバリエーションや複雑なパターンに対応できるケースが多いです。このアプローチにより、AI外観検査は、各製品のユニークな特徴を理解し、幅広い不良タイプに迅速かつ正確に対応できます。従来のセンサでは見逃すことがあった微妙な色の変化、形状の歪み、あるいは未知の不良パターンであっても、複数のアルゴリズムを利用することで効果的に検出できる可能性が高まります。
◯画像処理センサでよくある失敗
製造業における画像処理センサは、環境の変化に対する適応性に限界を持っています。たとえば、時期や時間帯によって変わる周辺環境の明るさの変化は、センサの検出能力に影響を及ぼし、誤った判定を引き起こす原因になります。特に太陽光の影響を直接受ける場所では、日中と夜間での照明の差がセンサの精度に大きく影響することがあります。
さらに、画像処理センサの調整は非常に複雑であり、特定の個人の技術や経験に依存する傾向があります。これにより、センサの設定やメンテナンスが属人化し、その人が不在の場合には問題を迅速に解決できないリスクがあります。属人化は、検査プロセスの標準化や効率化を阻害し、長期的な品質保証において課題を生じさせることになります。これらの問題は、検査プロセスの安定性を低下させ、最終的な製品品質に悪影響を及ぼす可能性があります。
◯外観検査AIでよくある失敗
外観検査AIの導入は多くのメリットをもたらしますが、失敗するケースもあります。
トレーニングデータの質が悪いと、不十分なデータセットでトレーニングされたAIは正確に検出する能力に欠けることがあります。特に光学設計が不適切であったため、不良部分などがしっかりと撮影できず、要件を満たすAIが開発できないケースも少なくありません。また、実際の生産環境と異なる条件でトレーニングされたAIは、現場での検査精度に問題を生じさせる可能性があります。そのため、手戻りが生じないよう、要件定義や光学設計の段階からしっかりと精査しPJを進めることが非常に重要になります。
| フツパーによる検査自動化&品質改善のトータル提案
製造業向けのAIサービスを提供するフツパーのパッケージサービスの一つである「メキキバイト」は、現場の外観検査の自動化と品質管理の強化を支援するソリューションです。
創業当時より1000以上の現場の声を聞いてきたフツパーならではの製造現場に特化したサービス内容は多くの企業様の現場カイゼンに貢献しています。
◯外観検査AI「メキキバイト」の4つの特徴
1. 高精度
検品に特化した独自のアルゴリズムにより、従来の画像処理では見ることが難しかった不良も安定的かつ高精度で検出が可能。人と同等以上の検査精度をもつAIの導入によって品質の安定性が向上します。従来の画像処理センサでは難しかったあいまいな判定や個体差のある判定にも有効であるほか、難しいチューニングも必要ありません。
2. トータルサポート
導入相談から運用まで一貫してサポートいたします。AIの開発はもちろん、製造現場で使える道具にするための周辺ハードウェアの設計もお任せください。導入前の相談段階から実運用まで徹底してサポートし、手戻りのない現場のDXや最新技術の導入を実現します。
3. 低コスト
月額98,000円から使える外観検査AIで最新技術のスモールスタートに貢献、早期の投資改修を実現いたします。これまで収集した製造現場の生データと独自のアルゴリズムによって高効率でAIを開発することで、本来高価格となる高精度なAIを低価格でお届けします。
4. 品質改善
メキキバイトの現場運用は、シンプルな画面構成が特徴的なアプリケーション「Hutper Insight」によって行われます。この「Hutper Insight」には検査結果の集計機能やノーコードAI開発機能も搭載しているほか、不良の根本解決につながる独自の品質管理機能を搭載しております。独自の技術により、製品の外観をスコア(良品らしさ)で定量的に評価し、その数値情報をJISに基づいた各管理図*への自動変換することで、品質の傾向分析が可能となります。この機能により、これまで以上の徹底した品質管理を実現するだけでなく、品質や工程カイゼン活動の土台の一角となります。
*JIS Z9020-1,2(管理図)に対応