人員配置のDX化から始める少子高齢化対策
「誠意と情熱」を社是とし「預かるだけでは倉庫業とは言わない主義」を掲げ、お客様の役に立つために様々な流通加工を手懸けている郵全株式会社。創業以来、顧客ニーズに寄り添った柔軟な対応力と、業界をリードする先進的な取り組みで、物流業務の「効率化」と「価値創造」を追求してきた。少子高齢化対策の第一歩として、どこよりも早くスキルパズル導入を決めたパイオニアにきっかけと効果について伺います。
〈導入前の課題〉
・1週間分の人員配置を作成するのに、丸一日(約7時間)かかっていた
・従業員のスキル管理はしておらず、担当者の感覚とノウハウに頼っていた
・Excelに上書きを重ねていたので、配置履歴は全く残っていなかった
・始業直前に当日の欠勤連絡が入ることも多く、再計画にもかなり時間を割いていた
〈導入後の効果〉
・1週間分の人員配置がたった1時間となり、他業務へかけられる時間が増えた
・システムのためにスキルを登録していく中で、スキルマップが作成できた
・配置履歴がすべてデータ化され、生産効率の確認やトレーサビリティが容易になった
・徐々に当日欠勤も減り、再作成も短時間で済むようになった
郵全株式会社
取締役事業本部長
兼アパレル事業本部長
兼企画開発本部長
長谷川 様
郵全株式会社
IT推進室チーフアドバイザー
狩野 様
郵全株式会社
アパレル事業部
小嶋 様
◯モニター企業として開発当初からご参加いただきましたが、モニター応募のきっかけについて教えてください
小嶋:毎日のシフト作成には苦労していました。前日に1時間かけて考えたシフトも、当日欠勤者が出れば、また作成し直します。特に感染症が流行する時期は、当日に5人の欠勤者が出ることもありましたね。またシフト希望提出や勤務日の共有、当日の人員配置周知も紙で行っており、データとしてはなにも残っていない状態でした。
狩野:以前よりこのデジタル時代に紙管理をしていることが気になっていましたが、DX化へのノウハウが少なく進められずにいた時にモニターのお話を聞き、ちょうどよいのでは?と感じ応募しました。管理側としては、勤怠情報と繋げてデータ化できることもポイントでしたね。
あとは、大手企業など他社の配置要件やDX化のノウハウも間接的に吸収できるのでは、という気持ちもありました。
◯導入前の業務フローやお困りごとについて教えてください
小嶋:出勤者が10名くらいの頃は、作業場で口頭で配置の指示をしていました。徐々に人数が増え、20人ほどになった頃に、事業所内の配置図をExcel上で作成してもらい、名簿から出勤者を突合しながら手動で貼り付けていましたが、人数が増えていくとだんだん作成していくのが大変になってきてました。
しかも各工程の習熟度や生産性が良さそうな組み合わせなどは私の感覚で、スキルマップなども作成していなかったので、私以外が作業できない状態でしたね。
この作業は、1日分のシフトを作成するのに1時間、1週間分を作ると丸一日を費やします。なのに前述のように、当日欠勤者が出れば、業務開始までに配置調整が必要となり、朝はいつも時間に追われていました。
当日欠勤者も特に記録できてないので、元々休みだった場合と区別がつきませんでしたし、配置の履歴も上書きしていたので、データとしては全く残っていませんでした。
◯本サービス導入後の効果について教えてください。
小嶋:操作に慣れてからは、本当に大幅にシフト作成の時間が削減できました。1週間分を作るのに約7時間かかっていたものが、今は1時間で作成できるようになりました。
当日欠勤者が出た際に、再配置の作業は当然必要ですが、欠勤者を登録するとすぐに配置画面で欠員箇所が確認できるので、直感的に作業が可能です。今までは紙とにらめっこしながら調整していたのに比べると負担感は全然違います。とても楽しく使わせてもらっています!
長谷川:今まで人が考えてきたものが本当に最適だったかは分からないので、AIが提案してくれる配置を実際に試してみて、生産性を比較していきたいと考えています。前述のように、フィードバックからAI配置の精度も生産効率も上げていけたら嬉しいですね。
狩野:少子高齢化が進む中で、社内での人材共有や他事業所との連携も考えていかなければならないので、今回スキルを可視化できたのは良かったし、実作業以外の個人スキルなども可視化していきたいと考えています。会社側が作った枠に従業員を当てはめて行くような、いわゆる昭和型経営を続けていくわけにはいかないと感じています。労働者が減少していく中で、個人スキルや特性などを活かした仕事を紐づけていく組織体制を構築して、組織効率や仕事の質を上げていきたいです。従業員側のやりがいも格段に上がりますしね。
小嶋:作業に対する慣れもあるかと思いますが、生産性も徐々に向上しています。
今は全体的なスキルが高くなるように配置していますが、配置実績なども反映していきたいです。目先の生産性を上げるために経験値が高い人を優先しがちですが、同じ作業ばかりが続くのも良くないし、属人化の原因にもなるので、育成も考慮しないといけないのが難しいところです。連続の配置時間制限やローテーション機能もあると聞いているので、今後はその機能も活用していきたいと考えています。
・配置計画の共有(作業場のモニターへ投影)
◯導入時に苦労されたことはありましたか?
小嶋:データ化しているものがなかったので、事前情報の登録作業は少し大変でした。個人のスキルをどのくらいにしたらよいのか?どのくらいのスキル設定にすれば、思うような配置にしてくれるのか?試行錯誤の繰り返しでしたね。自動配置を押してもエラーが出るけど、なぜかが分からなかったり。何度も担当の畝さんに電話しながら進めました。
初期版は配色もシンプルでパッと見で情報が認知しにくかったので、工程ごとに色を付けて欲しいなど要望もたくさんお伝えしました。スキルパズルの必要機能と判断いただいた機能・仕様についてはどんどん反映してもらい、とても使いやすくなったと実感しています。
狩野:新しいツールへの慣れですかね。AIの活用は、使う人のスキルによって変わってくることも多いです。ITツールに詳しくない人でも思ったような結果が出る、使用者側のスキルに関わらず標準化できるようなものになれば、もっと使いやすいのかなと感じています。
長谷川:ツールを使いこなす一環として、配置結果に対して配置担当者側で評価/スコア付け、生産実績などフィードバックを送ることで配置の良し悪しを再学習していくような機能があれば、AIの特性を活かしてさらに個社ごとのカスタマイズ度が高くなるのかなと感じています。
弊社では、工程間で連携する作業もあるので各工程のスキルと、工程間・人同士の相性なども配慮した最適化となると人間の脳ではシミュレーションしきれないので、AIにお任せしたいですね。
狩野:あとはスキルを評価すること自体が難しかったです。例えば、スキル5の模範作業を映像で撮って、その作業と比較した際のスコアを自動で算出してくれる機能などが将来的につけば、客観的な評価として数値化しやすいなと、AIの汎用性が上がるのを楽しみにしています。
◯最後に、本サービスのおすすめポイントを教えてください
小嶋:まずは履歴がすべてデータで残る点ですね。今まではExcelで作成して、毎日どんどん上書きしてしまうので、アナログ管理で配置履歴も残っていなかったが、今はこのシステムの中にすべて蓄積されています。なにか問題が起こってもその日の状況が確認しやすく、本当に助かっています。
あとは、作業時間が大幅に短縮できることです。配置業務に費やしていた時間を他の仕事に回せているので、DXの威力に驚いています。
狩野:管理側としてはリアルな出勤率を簡単に算出・可視化できるようになったことが大きいです。今までは勤怠システム上の出勤実績しかなかったので、当日欠勤などは正確な数値を可視化していませんでした。でもこのシステム上で「突発休」の記録が会社側と従業員側の双方で確認できるので、当日の欠勤率が下がってきたのは嬉しい副産物です。もちろん体調不良など仕方ない場合もありますが、手元で出勤率が見えることで抑止効果は出ていると実感しています。
長谷川:やはりシステムで可視化できるというのは大きいです。従業員も出勤できると提出したシフトへの責任感や仕事に対する意識も向上しています。評価面談などでデータとして提示できるので、
あとはデータ化もとてもメリットがあります。基礎データさえあれば、リアルタイムで分析もかけられるので、いろんな発展性が見込めると考えています。
狩野:さらにこのようなDX化の取り組みは採用や営業先の企業様への信頼感UPにもつながります。スキルパズルの導入を少子高齢化対策への第一歩として、これからも様々な挑戦をしていきたいと考えています。
物流業の枠を超える郵全株式会社はデジタル化を加速させ、今後も業界をリードしていくに違いない。
(本内容は2024年11月に取材した内容です)