「真摯」な姿勢で作り続ける、本物の洋菓子
創業者 依田友一氏の「真摯」な想いを受け継ぎ、半世紀以上にわたって愛され続ける洋菓子舗ウエスト様。「本物」であることを貫き、「美味しいお菓子をたくさんの方に食べていただきたい」―この想いを胸に、原材料に徹底してこだわりを持ち、人工の保存料や着色料はできる限り使用しない。機械では作ることのできない、職人による手作業での成形にこだわり続けています。
しかし、その「本物」へのこだわりを実現する品質管理において、様々な課題を抱えていました。手作業による製品のばらつきを見極め、お客様に安心安全な商品をお届けするため、これまで約20〜30名という大人数で目視による外観検査を実施していました。
創業者の想いと職人の技術を次世代に繋ぐために、ウエスト様は最新のAI技術を導入することで、「本物」の価値を守り続ける新たな挑戦を始めました。

今回は「メキキバイト」の導入を主導された、日野工場工場長の三浦様にお話を伺いました。

導入前の課題|「何万枚」もの検査を人の目で
「1日に何万枚ってやるんでね」と三浦様が語るように、膨大な量の製品を人の目でチェックしていました。妥協を許さない品質管理を続ける中で、以下のような課題が浮き彫りになっていました。

人員不足と長時間労働
・繁忙期には検査担当者が22時頃まで残業することも
・製造部門も月間の残業時間が相当な時間数に
・検査工程に多くの人員を割かざるを得ない状況
生産性の限界
・検査に人員を集中させることで、他の工程への人員配置が困難
・製造から梱包まで全体の生産効率に影響
検査品質のばらつき
・人の目による検査のため、見落としのリスク
・疲労による検査精度の低下
・新人の育成とスキル均一化の困難さ
自動化の決め手|社長主導のAI技術探求と『ワンストップ』への信頼
代表取締役社長の依田様は、早くからAI技術の可能性に注目し、積極的に展示会を巡って情報収集を続けていました。「社長もAIとかに興味があって、いろいろ展示会とかで調べてきて」と三浦様が語るように、トップ自らが最新技術の動向を把握し、自社への導入可能性を探っていたのです。そんな中、展示会で出会ったのが『メキキバイト』でした。
現場主義AIと『ワンストップ』ソリューション
AI導入を具体的に検討する中で、ウエスト様が重視したのは技術力だけでなく、創業者の想いを受け継ぐ「真摯」な姿勢を理解し、長期にわたって伴走してくれるパートナーかどうかという点でした。
「他社からも提案があったんですけれども、カメラとAIがまた別の会社になっちゃうということで」と三浦様。多くのサービスがAIとカメラを別々に提供するため、導入後の連携やサポートに不安を感じていらっしゃいました。
選定の決め手となったのは、AIとカメラの両方をフツパーが提供する『ワンストップ体制』でした。導入から運用、トラブル対応まで一貫したサポートが受けられる安心感、買い切りではなく継続的な改善を前提としたサービス設計、そして導入しやすい料金体系が、ウエスト様の課題解決への道筋を明確にしました。
「フツパーさんの場合、導入後も継続的に見守っていってくれるということで、そこがやっぱり強み」と評価いただきました。
導入から稼働まで|現場に寄り添う柔軟な対応
導入までは、繁忙期に合わせたタイトなスケジュールでした。通常は、投入口から検査・排除までの一式を同時に納品しますが、今回は検査装置のみを先行して納品し、製作に時間のかかる排除装置との設置タイミングをずらしました。
この柔軟な対応により、データ収集からAIモデル作成までに1ヶ月の余裕を確保でき、稼働を繁忙期に間に合わせることに成功しました。
現場に配慮した設計思想
手作りのリーフパイという繊細な製品を扱うため、ワークの取り扱いにも細心の注意が必要でした。
<投入時>
- リーフパイのサイズに合わせたガイドを設置し、回転や乱れを防止
- ガイドを広台とし、作業者がスライドさせるように投入できるため効率的な作業が可能に

<排除時>
- 昇降可能なコンベアにスライド式シュートを組み込むことで、ワークへのダメージを最小限に抑制しながら、作業者が回収しやすい構造を実現
- 製造工程や後工程の包装作業が効率的に行える搬送スピードを実現


メンテナンス性への配慮
食品製造現場での長期運用を見据え、メンテナンス性にも配慮した設計を採用しました。
- 設備を搬送機の片側に全て配置することで、メンテナンスが容易に
- 焼き菓子の砂糖や破片が落下することを想定し、照明に定期的なエア吹き付け機能を実装
- 搬送面の清掃作業を考慮し、光学機器(照明など)は上下に稼働可能な装置に
導入後のサポート
AI導入直後は想定外の事象が発生しやすいものですが、ウエスト様にも協力いただき、二人三脚で微調整を繰り返しました。毎日のように電話でやり取りしたり、週単位でエンジニアが現地に出向くことも。「現場の方々が納得できる品質管理基準実現まで、伴走できたことは大きな成果であり、試行錯誤の中で深い信頼関係を築くことができたと感じています」と担当エンジニアは話します。
導入効果|数字で見る劇的な変化
人員配置の最適化
導入前:20〜30名体制での検査
導入後:わずか3名での検査が可能に
生産性の向上
検査を担当していた人員が製造や箱詰めなどの他工程に回ることで、工場全体の生産効率が大幅に改善。「製造のほうにまで影響してきたんで、これはよかったなと思ってて」と、予想を上回る効果を実感されています。
残業時間の大幅削減
検査工程:繁忙期には22時頃までの残業 → ほぼ残業なし
製造工程:月間残業時間が大幅に削減(約20%減)
「昔はもう、22時とかまでやってたんですけど、今回(導入後の繁忙期)はそんなに残業がなかった」と三浦様。その効果は検査工程だけでなく、製造工程にまで波及しました。
検査精度の向上
「異物は明らかに減りましたね。人間の目で見るより確実」と三浦様。AIによる検査で見落としが減り、後から追加学習により検査精度がさらに向上しています。
メキキバイトによる検査の様子
担当者の声|働き方が変わった現場
三浦様のコメント
「負担もかなり減ってますね。他の仕事ができるんで、その時間。やっぱり、そういうのかなり違いますよ。今までは、総動員で選別(検査)してたんですけども、今は空いた人たちが箱詰めや詰め合わせの工程に入って作業できるので、効率的にできるっていうのは、かなり違うと思います」
AI導入は単なる自動化を超えて、働く人々の負担軽減と生産性向上を両立する結果となりました。
今後の展望|さらなるAI活用へ
現在、ウエスト様では別の工場への導入も予定されており、さらなる挑戦も始まっています。「今度は、検出する不良の種類が違うんで」「4種類ぐらい商品をやってもらうことになってる」と、AI技術のさらなる活用に期待を寄せています。
また、「細かく見れるようにできるようにお願いしたい」「限界っていうところをもうちょっと掘り込んでできるような感じに」と、より高精度な検査システムの実現を目指しています。
創業者の想いを受け継ぎ、「本物」を次世代へ
AI導入が単なるコスト削減や効率化だけでなく、働く人々の負担軽減と企業全体の生産性向上をもたらしました。
創業者 依田友一氏の「真摯」な想い、「高級」「本物」へのこだわりを大切にしながらも、最新技術を取り入れることで、お客様により良い商品を届け続ける。職人の手作業による「本物」の価値を守りながら、働く人々の負担を軽減する―そんなウエスト様の取り組みは、伝統と革新を両立する製造業の新たな先駆けとして注目されます。
(本内容は2025年8月に取材した内容です)
【導入製品情報】
製品名 :AI外観検査ソリューション「メキキバイト」
導入時期:2024年
検査対象:手作りお菓子の外観検査(カケ・異物・大きさ等)

社 名:株式会社洋菓子舗ウエスト
創 業:1947年1月4日
事業概要:洋菓子製造販売及び喫茶業
社 員 数:413名(うち正社員243名)
会 社 H P:https://www.ginza-west.com/