「食品の外観検査をAIで自動化したい」「AIを使って自動化するに当たって何を準備すればよいのかを知りたい」このような悩みを抱えている企業は多いのではないでしょうか。
食品の品質や安全を保証するため、食品工場における外観検査には高い水準が求められています。そのため、色や形状、細い髪の毛、小さな異物など、多岐にわたる検査項目を自動化することに不安を感じている方は多いでしょう。
そこでこの記事では、食品工場における外観検査AIの実用性と、導入手順を解説します。AI導入のメリットには、検査員の人手不足の解消や人件費の削減、検査品質の安定化などがあります。この記事を参考に、食品検査の自動化にAIが有用であることを理解して、検査工程の自動化を推進していきましょう。
| 食品工場における外観検査AI導入の背景
食品工場における外観検査の実態と、それに対するAIの実用性を解説していきます。
◯外観検査での人手不足や品質ムラに悩む食品工場
食品製造業は深刻な人手不足に悩まされており、外観検査員が不足しています。日本政策金融公庫の調査によると、人材が不足していると回答した食品関係企業のうち、80%以上が「求人に対する応募がない」と回答したとのことです。
(参考:食品産業動向調査(令和4年1月) | 日本政策金融公庫)
さらに、食品工場における外観検査の自動化はハードルが高いという課題もあります。なぜなら、色や形状の豊富な食品を取り扱い、多種多様な異物を検査する必要があるからです。
実際に、X線検査や従来のルールベースで自動検査するラインロボットを導入している工場はありますが、検出の難しい項目は従業員の目視検査で対応しています。これにより、人件費による利益の圧迫・検査品質のばらつきや、人手不足に対応できないという問題が生じています。
◯食品工場の外観検査で対象となるもの
一般的な食品工場の外観検査で対象になる項目は以下のとおりです。
・食品容器:汚れ、傷、穴、へこみ、付属品の有無など
・包装や梱包:入り数、破れ、傷、ラベルの破れやズレ、印字のズレなど
・食品:異物混入、形状、色、個数など
食品製造業が他の製造業と異なる点は、検査対象の形状や色に厳密なルールがないことです。たとえば、車用のエンジンに使われる部品にはμm単位の高い寸法精度が求められますが、パンはランダムな形で製造されます。
このように、食品工場の外観検査は機械で検査しにくい特徴があります。他にも、食品を入れるための容器や包装・梱包工程の検査も必要です。
◯既に多くの企業が画像認識AIで食品外観検査をDX化・自動化
既に画像認識AIは食品の外観検査でも実用化できるレベルになってきています。なぜなら、多層化したニューラルネットワークを用いた機械学習であるディープラーニング(深層学習)とバックプロパゲーション(誤差逆伝播学習)を組み合わせたAIモデルを用いることで、あいまいな目視検査を再現するための特徴量を自動で見つけられるようになったからです。そのため、形や色のばらつきが大きい食品の外観検査にも画像認識AIが活用できるようになりました。
ある中小企業では、ルール化が困難だった食品の外観検査にAIを用いることで欠陥の特徴をモデル化することに成功し、4人体制の製造ラインを管理者1人に削減することができました。このように、ルール化ができずに自動化できなかった食品の外観検査に、画像認識AIを活用する事例が増えてきているのです。
| 食品工場の外観検査をAIで自動化するメリット3選
AI外観検査で目視検査を自動化するメリット3つを紹介します。
◯人手不足の解消
外観検査工程を自動化できれば人手不足の解消につながります。外観検査は対応すべき数量が多く、集中力も必要なためある程度の人数が必要な工程です。AI外観検査であれば、食品を生産ラインに流すだけで判別してくれるため、検査員の代わりとして作業を任せられます。また、検査にかかる時間は毎回ほぼ同じなので、時間あたりの検査数量も安定します。検品数が増加した場合は装置の増設によって対応ができます。
◯検査コストの削減
AI外観検査の導入により目視検査にかかっていたコストを抑えられるメリットがあります。必要最低限のメンテナンスは必要になるものの、検査装置にはランニングコストがほとんどかかりません。さらに、人では確認に時間がかかっていた検査も高速に検査できるため、1台の導入で複数人分の働きが期待できます。ただし、導入時のコストには注意が必要です。理想の投資効果は、削減可能な人件費の2年分よりも導入コストが下回っていることです。検査装置は一度導入すれば、5〜10年以上の稼動が見込まれるため、導入コストを抑えるほど得られるコスト削減の効果は大きくなります。
◯検査品質の安定
AI外観検査は、目視検査でラベル付けされた食品の特徴量をあらかじめ学習させることで多種多様であいまいな検査項目の判別を実現しています。毎回同じフローが実行されるため、検査基準が安定するというメリットがあります。人が行う目視検査の場合、検査の熟練度やその日の体調などによって検査基準がばらつくことは避けられません。しかしAI外観検査であれば、熟練者と同じレベルの検査を連続で実行できます。
| 食品の外観検査をAIで自動化するための5ステップ
では食品の外観検査をAIで自動化するには具体的にどうすればよいのでしょうか。手順は以下の5ステップです。
1. 目視検査工程の課題を抽出して定量化する
2. AIを適用する製品を決める
3. サンプルを用意して検出テストをする
4. 撮像機器とAIサービスを導入する
5. AI外観検査を運用する
それぞれ詳しく解説します。
◯手順1.)目視検査工程の課題を抽出して定量化する
まずは、製造現場や品質管理部門にヒアリングを行い、問題点を定量化してください。
たとえば「検査に時間がかかる」という声があるなら、検査に毎月何時間かかっていて、1時間あたり何個検査できているのかを算出します。
よくある困りごとの例を以下に挙げます。
・検査員の不足:離職率
・検査に要する工数の増加:月当たりの検査数、クレーム対応コスト、販売単価
・不良品率の改善:不良品混入率
課題を定量化することで、AIを適用すべき優先順位を明確にします。
◯手順2.)AIを適用する製品を決める
定量化した問題点を比較して、費用対効果や実現性があるかどうかを判断します。
その判断基準の例は以下の通りです。
・検査に時間がかかる
・需要見込みが高い
・他の食品と似た形状や素材を使っている
・製品の形状がシンプル
・不良箇所を写した画像がある
・不良品を用意できる
それぞれの項目を製品ごとに比較して、優先順位を導き出しましょう。
◯手順3.)サンプルを用意して検出テストをする
検査する製品が決まったら、サンプルを準備します。準備する数の目安は、合格品50個です。検証用サンプルの画像を準備できない場合、撮像機器も貸し出してくれるかどうか確認しておいてください。なお、サンプルとして検査合格品だけでなく不合格品を合わせて準備しなくてはならない場合もあります。貸し出し不可の場合は、準備すべき撮像機器の情報をヒアリングして自社でそろえましょう。サンプル画像がそろった段階で、AIで検出可能かテストしてもらいます。
◯手順4.)撮像機器とAIサービスを導入する
テストの結果が良好(良品と不良品をAIで判別できる)であれば、撮像機器とAIサービスを導入しましょう。撮像機器は以下のようなものが必要です。
・カメラ
・照明
・制御機器:PCや専用コントローラ
・固定治具
製造ラインによって、カメラ等をインラインで設置するか、専用の搬送装置を製作するかを判断する必要があります。不良品と判断したときの排出機構も準備が必要です。
高速なAI処理が求められるなら、エッジデバイス(PC)も必要です。処理能力や機械との信号のやり取りもあらかじめ決めておく必要があります。
導入が完了したら製品を投入し、AIの検査精度を算出します。目標の精度に満たない場合は、モデルの再学習・再構築を検討します。
◯手順5.)AI外観検査を運用する
AI外観検査が正しく運用されるように作業手順書を制定し、現場作業者にOJTを実施しましょう。運用後に食品や製造ラインに変化点が生じた場合、AIモデルの再学習・再構築を検討する必要があります。
たとえ変化点がなくても、高い判別精度を維持していくためにAI外観検査が正確に検出できているかを定期的に点検しましょう。
| 食品工場に最適な外観検査AI「メキキバイト」
株式会社フツパーでは、「はやい・やすい・巧い」をコンセプトに、主に製造業向けの外観検査AIサービスである「メキキバイト」を開発しました。これまでのAI外観検査で課題になっていた、価格と導入ハードルの高さを解消する画期的なサービスです。ここでは具体的なサービス内容と事例を紹介していきます。
◯外観検査AI「メキキバイト」とは?
「メキキバイト」は、画像を取得するために必要な撮像機器と、AIの処理に必要なエッジデバイスをセットにして提供しています。撮像機器やAI処理に必要なハードウェア・ソフトウェアをバラバラに準備する場合、システムが複雑化するため、運用開始後も専門の人材や協力会社に頼らざるを得ない状態になります。また、各システムを別々の企業が対応することになるため、不具合が発生した際の原因をつかみにくいというデメリットもあります。
「メキキバイト」なら、AI構築後の運用には専用アプリを使うため、運用の負荷は最小限で済みます。撮像機器の選定から運用まで一貫して対応しているため、お客様の問い合わせ窓口を一本化できます。
株式会社フツパーでは、「メキキバイト」サービスを初期費用0円、契約期間の縛りなしで月額298,000円から提供しています。検査員のうち1人分を省人化するだけで費用対効果が得られる金額です。さらに2年目以降は月額98,000円でご利用いただけるため、浮いた分の費用がそのまま利益になります。
◯「メキキバイト」の導入事例
◇検査工程の自動化・無人化を実現
ある菓子製造会社様では、「メキキバイト」の導入以前は目視検査を自動化できず、外観検査工程では1ライン当たり検査員2人ずつを配置して対応していました。そのため、人材確保や検査品質のばらつきといった課題をなんとかしたいと考えていました。
そこで「メキキバイト」を導入することにし、株式会社フツパーがAIモデルを構築しました。不良の種類が複数あるため、センサではできなかった検査項目も、ディープラーニングを搭載している「メキキバイト」で対応することに成功しました。その結果、検査工程の自動化が実現し、2つの製造ラインで無人化を達成しました。
◇ヒューマンエラー回避
もうひとつ、個数を間違えて梱包・出荷するヒューマンエラーに悩まされていた食品製造メーカーに導入した事例を紹介します。この工場では専任の検品担当者がおらず、個数間違いに気づかないまま後工程に流してしまう課題がありました。
そこで「メキキバイト」を導入し、AIのモデル構築を実施しました。無造作に置かれた食品は重なりがあり、一つひとつの認識が難しかったため、全体をひと塊として正解・不正解をAIに学習させることで個数間違いを自動で検出可能にしています。
◯結論
「メキキバイト」は契約期間の縛りはないため、お気軽に導入していただけます。外観検査の省人化にお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。