医薬品製造における「安心・安全」への責任
ワキ製薬株式会社様(以下、同社)は、「STAND BY YOU.(いつも皆さまのわきに)」をキャッチコピーに、1世紀以上優れた医薬品・健康食品をお客様にお届けし続けています。自社製品の製造だけでなく、受託製造も手がける同社にとって、品質保証は妥協できません。
取引先からの増産要請を受け、生産能力を倍増させる計画が持ち上がった際、大きな壁に直面しました。既存の設備では、増産スピードに対応できない。しかも、従来の検査機では検出しきれていなかった不良もあり、発生個所を全数排除していた――。
「増産するなら、生産能力も検査能力も同時に向上させなければ意味がありません」
こうした背景から、同社は検査機器の刷新という大きな決断に踏み切りました。
今回は、そのプロジェクトを主導された、第一製造部 次長 細川様にお話を伺いました。
導入前の課題|増産と検査精度向上、2つの壁
既存設備の限界が露呈
取引先からの増産要請に応えるため、生産体制の抜本的な見直しが求められていました。当時の製造設備では能力に限界があり、取引先の設備を借りて生産能力を倍にする計画が立てられましたが、問題となったのが検査工程です。
「既存の検査機では、倍の生産スピードには対応できませんでした。増産しても検査が追いつかなければ、結局ボトルネックになってしまいます」
技術的な3つの課題
既存の検査機には、以下のような技術的課題がありました。
1. 姿勢制御の難しさ
錠剤シートの姿勢が安定せず、照明の当たり方が変化してしまう。その結果、誤検出が多発し、検査精度に影響が出ていました。設計上のスピード制限もあり、高速化も困難な状況でした。
2. 汎用カメラの限界
既存検査設備は汎用性の高いカメラシステムを採用していましたが、錠剤シートに特化した検査が難しく、検査レベルの向上に限界がありました。
3. 検出できない不良の存在
特に課題だったのが、以下の不良を検出しきれないことでした:
・シワ:目視では確認できても、カメラには映りにくい微細なシワ
・ポケット異物:錠剤を包むポケット部分の角に付着する異物
「検査したい不良項目はあっても、技術的に無理だと諦めていた部分がありました」
医薬品製造における検査の重要性
医薬品業界では、製品の品質保証が極めて重要です。検査工程の信頼性は妥協できません。
一方で、人の目による検査では、作業者のスキルや疲労に依存してしまうという課題もありました。生産性を落とさず、かつ安定した品質を維持するためには、機械による高精度な検査体制の構築が不可欠でした。
選定の決め手|納期対応力と、製品特性に合わせた技術の柔軟性
取引銀行からの紹介で出会い
増産計画のスケジュールはすでに確定しており、限られた時間の中で最適な検査機を見つける必要がありました。そんな切迫した状況で、取引銀行からの紹介を通じてフツパーと出会いました。
複数のメーカーを比較検討されましたが、多くは「納期が間に合わない」「設計から始めるのは難しい」といった理由で対応が困難なケースが多かったといいます。
3つの決め手
最終的にフツパーを選んだ理由は、以下の3点でした。
1. 増産計画に間に合う納期対応力
タイトなスケジュールの中でも、確実に納期を守れる体制が整っていたこと
2.既存検査機で検出が難しい不良検出が可能な技術
検査アルゴリズムの部分だけではなく、光学系*も含めて提案する総合的な技術力を有していたこと
*光学系とは:カメラや照明、レンズの配置や光の当て方など、検査対象を「正しく・見えやすく」撮影するための設計全体のことです。AIの判定精度を高めるために欠かせない要素です。
3. 丁寧な対応
技術的な内容を分かりやすく説明し、課題に真摯に向き合う姿勢が感じられたこと
「カメラのことは全く分かりませんでしたが、本当に丁寧にお話しいただきました。この方々なら安心してお任せできると感じたんです」
導入から稼働まで|予想外の課題を、協働で乗り越える
想定外の事象が次々と
導入プロセスは、決して平坦ではありませんでした。包装機設置スケジュールの都合により、検査機の設置から稼働までが非常にタイトになり、課題を残した状態で本番機投入を迎えることになりました。
・姿勢制御の想定外の難しさ
錠剤シートは非常に薄く、搬送時の姿勢制御が想定以上に困難でした。理由は、メーカーによってアルミシートの滑りやすさが異なるため、自然落下で思った通りに搬送することができないという予想外の事態が発生しました。
・不良排出機構の調整
エアで不良品を吹き飛ばす排出機構についても、姿勢が安定しない影響で、非常に細かな調整が必要となりました。
不良を可視化する光学設計の工夫
検査精度を向上させるために特に効果を発揮したのが、不良を可視化するための光学設計の工夫です。
・青色光による錠剤不良の検出
青色の照明を用いることで、錠剤自体のシワや欠けといった不良をしっかりと画像で捉えることができ判定精度が向上しました。
・赤色光による異物・寸法の計測
赤色の照明により、アルミの反射で見えなかった部分を可視化。異物の検出や、製品寸法の正確な計測が可能になりました。
「既存の汎用カメラシステムでは見えなかった部分が、照明の種類や当て方を工夫することで見えるようになった。柔軟に対応いただけたことが素晴らしかったです」
8ヶ月の二人三脚
上記課題解決のため、双方が率直にコミュニケーションを取り合い、一つひとつ丁寧に改善を重ねていきました。
フツパーの技術者は、現場で発生する予想外の挙動に対しても、常に前向きに対応。
「現場作業時にはいつも前向きに対応してくださり、大変心強かったです」
約8ヶ月をかけて、安定稼働を実現。その過程で築かれた信頼関係は、現在も継続しています。
導入効果|予想を上回る成果
定量的な効果
導入から10ヶ月が経過し、以下の効果が確認されています。
1.検査スピードの大幅向上
導入前:110シート/分
導入後:160シート/分
→約45%の高速化を実現
2.検査項目の追加
従来は技術的に検出が困難だった以下の2項目を追加:
・シワ:錠剤シート表面の微細なシワ
・ポケット異物:錠剤を包むポケット部分の角に付着する異物
検査機のソフトウェアについても、高い評価をいただいています。
「他の検査機に比べて、非常に分かりやすいUIです。どこを触ったらどう変わるかが明確で、現場の作業者も『扱いやすい』という声が上がっています」
複雑な設定なしで直感的に操作できる設計が、日常のオペレーションの円滑化につながっています。
操作性の高さも評価
検査機のソフトウェアについても、高い評価をいただいています。
「他の検査機に比べて、非常に分かりやすいUIです。どこを触ったらどう変わるかが明確で、現場の作業者も『扱いやすい』という声が上がっています」
複雑な設定なしで直感的に操作できる設計が、日常のオペレーションの円滑化につながっています。
省人化による品質の安定
導入後、社内バリデーションを実施し、機械検査の信頼性を確認。現在は、検査工程を大幅に省人化し、安定した品質保証体制が構築されています。
「人の目による検査では避けられなかった、スキルのばらつきや疲労による見落としのリスクが解消されました。24時間、安定した検査ができるようになったのは大きいですね」
今後の展望|さらなる自動化と、「人にしかできない仕事」への挑戦
さらなる自動化への期待
同社は、今回の導入を起点に、さらなる自動化を検討しています。
「今回の検査機導入をきっかけに、箱詰め工程などの集積部分も自動化できれば理想的です。人が関わる領域を、少しずつ減らして作業者への負担をなるべく減らしていきたいと考えています」
検査だけでなく、その後工程の自動化にも期待が寄せられています。
自動化の真の目的は「人を減らす」ことではない
自動化推進の背景には、明確な想いがあります。
「AIや機械の導入は、人を減らすためではありません。作業者により高度な仕事をしてもらうためです。人にしかできないことに注力してほしい――そのために、機械でできることは自動化していく姿勢を常に持っています」
単純作業から解放されることで、作業者は品質改善や工程最適化といった、より創造的で付加価値の高い業務に集中できるようになります。
「世界で一番楽しい会社」を目指して
同社が自動化を積極的に推進する背景には、もう一つの明確なビジョンがあります。
「社長がよく言っているのは、『世界で一番楽しい会社にする』ということです。仕事のストレスを減らし、無理のない労働環境の中で、従業員一人ひとりのQOL(生活の質)向上を目指しています」
自動化による作業負担軽減だけでなく、社員運動会やスポーツイベントなど、コミュニケーションの機会も積極的に提供。多様な価値観を認め、一人ひとりが幸せを感じられる環境づくりに力を入れています。
「お金が欲しい人、休みが欲しい人、スポーツを楽しみたい人――価値観は人それぞれです。その多様性を認めて、それぞれが幸せだと思える環境を作りたい。自動化は、その実現のための重要な一つの手段なんです」
こうした企業文化が、最新技術を積極的に取り入れる土壌となっており、採用活動においても大きな武器になっているとのことです。
創業者の想いを受け継ぎ、次世代へ
同社の導入事例は、増産対応という事業課題と、検査精度向上という品質課題を、技術の力で同時に解決した好例です。
導入プロセスでは様々な技術的課題がありましたが、双方が率直にコミュニケーションを取り、協働で乗り越えました。その結果、検査スピード45%向上、検査項目の追加という成果につながっています。
そして何より印象的だったのは、「従業員のQOL向上」という明確なビジョンのもと、自動化を推進されている姿勢でした。人にしかできない仕事に集中できる環境づくりは、製造業の未来を示すモデルケースと言えるでしょう。
「技術は進化します。でも、人を大切にする想いは変わりません」
その言葉の通り、同社は技術革新と人間尊重を両立させながら、次の時代へと歩みを進めています。
今後も同社の取り組みを支える技術パートナーとして、価値創出に貢献してまいります。
(本内容は2025年11月に取材した内容です)
社 名:ワキ製薬株式会社
創 業:明治15年(1882年)2月
事業概要:医薬品の製造販売(家庭配置用医薬品、OTC用医薬品)、
健康補助食品や栄養機能食品の製造販売など
社 員 数:72名
会 社 H P:https://www.a-kusuri.co.jp/