2023/05/18
兵庫県出身。広島大学工学部卒業。専攻テーマは製造プロセスの最適化。新卒で日東電工に入社し、ICT部門の法人営業に従事。退社後はWebサービスを開発し、イスラエルで起業を試みるも失敗。その後工場向けAI/IoTベンチャーの事業開発グループリーダーを経て、当社を設立。MENSA会員。
創業から3年が経ちましたが、今のフツパーは大西社長から見てどういう会社になりましたか?
創業期はなんか動物園って感じでしたが、最近はサファリパークくらいになりました。
毎月新しいメンバーが加わっていき、すぐにいろんなところで活躍していく、会社にこれまでなかった知見や文化が入ってきて、会社や組織がそれに合わせて変化していく、みたいなことを繰り返しています。
まだまだこれから、サファリパークからジャングルみたいになっていき、ゆくゆくはアマゾンを超えるような会社にしていきたいです。
もともと、僕以外はキャラ濃いめのメンバーばかりで、会社のメンバーで飲み会をしたら、ずーーっと仕事の話をして常に誰かが喋っている、みたいな雰囲気が創業1〜2年の頃はありました。
それが正社員だけで30名を超えるくらいになってきて、かつ若手ばかりでなく結構幅広い年齢層のメンバーが増えたらさすがにもうちょっと落ち着いてくるのかなと思っていたんですが、むしろ逆で、よりパワーアップしているっていうのが今のフツパーですね、もう手に負えないです。
そうはいっても2023年4月でフツパーは3歳になりましたが、3年前の写真なんかを見てると、ほんとに会社としてはガラッと変わったなと思います。
普段は、毎月どう会社を伸ばしていくかとか、昨年比で事業がアップルトゥアップルでどれくらい伸びたかとか、割と目の前のことを考えてばかりのことが多いですが、ふと振り返ると結構なスピードで拡大してきたようにも思います。
ただそれ以上に、AI技術の進歩や業界の変化は速いなと感じています。
ChatGPTやグーグルのBardのような大規模言語モデルが出てきたり、世の中をガラッと変えてしまうような技術が日々出てきていますし、それらがすぐ社会に浸透していっています。
世の中の変化に合わせて、どう会社やサービスを変えていくか、常にメタ的な視点を持ちながら、対応していくことが求められているのではと思います。
フツパーの成長スピードは創業当時に思い描いていたとおりになりましたか?
ここだけは、想定に近いです。
事業内容もですが社員数、売上規模、顧客数、資金調達額、どれも概ね目指していた数値感ではあります。
というよりは、当初の計画通りの成長ができるように、やれることをやってきたというのが実態に近いです、なのでプロセスや中身は全く計画通りではないですね。
むしろ想定外だったこととしては、最初の事業から大きなピボットをせずに、そのまま拡大してきたことです。
これは製造業の人手不足、特に検品・検査という領域に大きな課題があり、これまで大きな変革が起きてこなかった最大のアナログ産業になっているためだと考えています。
とはいえ、まだまだ製造業全体で考えた時に、ほんの一部の課題解決にしか取り組めていないのも事実ですので、サービスの提供価値をより高めていき、事業拡大のスピードをさらに加速させていきたいです。
創業当時に比べて競合のサービス・会社は増えたのではないかと思いますが、どのような勝ち抜くビジョンをお持ちですか?
まず前提としてあるのは、フツパーはAI会社というカテゴリーで見ると、そもそも後発のスタートアップの部類に入るということです、それもかなりのレベルで。
色々なAIスタートアップや大手テック企業が研究開発やサービス開発を進めている中で、半導体の進化もあり安価な小型デバイス上でAI推論ができるようになってきたというタイミングで、「月額で手軽に使える画像認識のエッジAIを製造業の検査領域に特化した形でサービスインした」のがフツパーだと思っています。
創業当時は結構SaaSの領域だと業界特化のサービスがたくさん出てきていたんですが、一方でAIに関しては汎用的な用途のものがまだまだ多いという、そのくらいの時期だったと認識しています。
もう少し遡ると2017年頃に最初のAI銘柄のIPOが出始めて、ただ、研究開発や受託メインのところも多く、それから徐々に社会実装や具体的な用途が分かるものにシフトしていき、さらに直近1〜2年はより事業性や利益を求められるような、そんな流れがきているのが現在という流れですね。
これは短期的なトレンドの移り変わりかもしれませんが、結局は、実社会でしっかりと使われていて、ちゃんと利益が出て、そして継続性のあるビジネスが生き残っていくのだと思っています。
勝ち抜くにはそこに愚直に取り組むしかないと思っています、それが1番難しいのですが。
なので、あまり競合のサービスがどうとかは気にせず、製造業という市場はとてつもなく大きいですし、今はライバルに見えるような会社ともむしろ一緒に頑張っていきたいですし、自分たちは徹底してお客さんと向き合って提供価値を高めていくしかないです、これを続けていきます。
一方で長期的なトレンドをみたときには、明確な取り組むべきポイントはあるかと思っています。
2010年以降の10年間は主にスマホの中のサービスが世の中を変えてきましたが、これからはスマホの外、リアル産業のDXが主戦場になると考えられます。
クラウドとエッジ、集中と分散、バンドル化とアンバンドル化のような、いくつか繰り返している流れがあり、そのなかでより分散化や個別最適な方向に進み、エッジAIが活用されると信じてきました。
そして、今はまだ現場にデータがない領域に対して、カメラやセンサを使ってデータを集め、蓄積されたデータベースの情報を最適化するのがAIで、これによって業務の一部を自動化及び最適化していく、というフェーズです。
モノづくりの過程のある部分から全体の最適化を進めていく、そして最適化によって空いた時間で新しい価値を創出する、という取り組みを進めていきます。
そのため今主力のサービスとなっている外観検査に限らず、工場全体に対して価値提供していくため、複数のプロダクトを同時に展開していく必要があると考えています。
昨年辺りからコンパウンドスタートアップという言葉も出てきていますが、製造業というバーティカルな領域でそこを目指していく、という形になると思っています。
今日明日で急に賢くならないような分野、Web上にデータが溜まってないところで勝負していく、ここが実は「泥臭い」やり方の先にあるいわゆる勝ち筋ではないかと思っています。
製造業のDXは日本が世界をリードできる可能性がある分野です。もともとモノづくりが強い国が当然有利なはずなので、そういう領域で勝負すべきだし、するしかないと考えています。
会社の今後のチャレンジに不可欠な“人”ですが、多様なバックグラウンド、キャリアのメンバーが集まってきていますね。今後はどんなメンバーの参画を期待していますか?
もっと多様で尖った強みを持ったメンバーが集まるような会社にしていきたいです。
その上で、どこにいっても活躍できるような人達が集まっているが故に、フツパーの事業に共感して働いてもらえるどうか、ここは特に重要だと思っています。
元々は黒瀬、弓場という同じ大学出身の属性の近い3人で創業して、当初はそこからのリファラル経由ばかりだったので、創業して10人目くらいまでは結構偏ったメンバーの会社だったと思います。
それが10人を超える辺りから、色々な分野のすごい人達が加わってくれ始め、大阪だけでなくて関東にオープンした支社も含め、全国的に採用も拡大できましたし、国籍も日本に限らずグローバルになりつつあり、どんどんすごいことになってきています。
創業からの初期メンバーの団結力の強さがあって、そこの土台に素晴らしいメンバーが加わっていった、これが今のフツパーだと思っています。
あとで振り返った時に、あの時期のフツパーに在籍していた、ということがブランドになるような、1つの時代のうねりが生み出されるような居場所にしていきたいです。
2025年の上場を目指すフツパーで、変わっていくことはありますか?
もちろんあるとは思いますが、準備し始めて分かることとしては、今後やっていかないといけないことは、基本的に全部会社としてやった方がいいことばかりということです。
より組織としてスケールしていけるように、将来を見据えて社内の仕組みや制度を整えていっているという認識です。
そもそも何のために上場するのかというと、1番は資金調達しやすくなること、あとは会社としての信用が向上すること、これらの得られる優位性を獲得してさらに会社を成長させることが目的です。
ちょっと違った観点にはなりますが、直近約2年間の国内の上場企業の倒産件数は1件だけなんです。これだけ市況が不安定な中であってもこの数字であることは、目立たないですがすごいことですし、信用力という意味においては大きいことです。
そんななかでフツパーが変わっていくことがあるとすると、トップラインの伸びだけでなく、利益を意識する、ということがこれまで以上に求められると考えています。
これは決して短期的な利益を追求するという意味ではなく、そもそもサービス全体の付加価値を上げる、お客さんへの価値提供を拡大する、そうすると、その結果が将来の会社の利益として返ってくるようになります。
あえて語弊がある言い方をすると、IPOできるかどうかはどうでもよくて、それよりもどうやって世の中にインパクトを与えるかや大きい課題を解決できるか、そういったことに思考を向けたいと思っています。
国内でそこそこの規模になるだけで満足せずグローバルで通用するようになれるか、上場以降さらに会社が伸び続けられるか、より長期的な視点では、これらは重要なテーマです。
色んな会社があってもいいし、もっと自由であるべきで、でもフツパーは社会の役に立つ会社、それを作り上げていく過程で上場を目指す、そんな風に考えています。
松下幸之助の言う「企業は社会の公器」という存在なのであれば、パブリックな会社になっていくのは当然の流れであり、誇らしいことでもあると思います。
今後もっと大きなことをしたい、工場のあり方を変える、モノづくり全体を変えるとなった時に、今の規模だとまだ難しいと考えています。上場してさらに事業規模を拡大していくことによって、より大きいことを成し遂げられるような会社を目指していきます。
社会の役に立つ会社を目指して変わっていくなかで、これだけは変えたくないということはありますか?
「カッティングエッジな技術を、真に必要としている現場に届ける」、フツパーはこれをする会社だと思っています。
この部分は提供するサービスの中身や範囲が変わったとしても、共通する部分になると信じています。
そのため今後も中小企業の現場で使えるサービスを提供していく、という部分は主軸に持っておきたいと思っています。日本の技術力を支えているのは間違いなく中小製造業なんです。
日本は大手だけでなく中小企業も含め、世界的に見てもニッチなモノづくりが強く、グローバルニッチトップのプロダクトを多く持つ会社が存在しています。私が新卒で入った日東電工がまさにそうでした。
また、前職では実際に中小企業の社内から工場向けのITサービスの開発をしてきました。フツパーでやってることは全てその延長だと思っています。
製造業向けにITサービスを導入することはとても難しいんです。リードタイムが長いこと、クラウドやサブスクへの馴染みがないことなど、理由は様々ですが、この領域で事業を立ち上げるハードルの高さは理解しているつもりですし、実際に成功している会社もそう多くありません。
時間がかかるからこそ、研究開発に特化するのではなく、最新技術の活用の方を考える、そのために手軽に使えるようにする、そこが根底にあった上での技術力・サービス力が重要だと思っています。
ただ逆に言うと、ほとんどのことはこれから変えていって良いと言えるくらい、常に時代に合わせて変化していくことの方を重視しています。
フツパーが目指す世界とは?
技術を良い方向に活用して、後世をより良くしていくことが使命だと思っています。
日本はGDP全体の約20%を製造業が占めているモノづくり大国です。フツパーは、製造現場の人手不足をテクノロジーで解消することでその土台を支えていきます。
まずは検品・検査という一部工程の自動化から始めていき、いくつかのパートの最適化に1つ1つ取り組む中から工場全体の最適化を進めることで、絵空事ではない、本当に価値のあるスマートファクトリーを実現できると信じています。
現場の作業は自動化され、サプライチェーンが短くなり、よりユニークなモノづくりを行うことができる、そんなモノづくりの世界を目指しています。
根底となるのは、できたモノそのもの以上に、それを作っている工場にこそ価値がある、と考えです。そういった考えのもとに製造プロセス全体、工場全体を進化させていくことができれば、これまでのモノづくりが変わるはずです。
将来的に今以上に現場が自動化できれば、人件費が安価な海外に工場を作っていた企業も、より物流コストが低いエリアに移ったり、複合的なメリットが大きい地域で生産を行うようになります。
そうなるとサプライチェーンがもっと短くなり、環境への負荷も下がる。そのプロセス自体が評価されるようになれば、モノづくりのあり方自体も変わっていきます。
その上で人の仕事はより商品開発や企画の比重が高くなり、それぞれの会社がより顧客ニーズに合わせた製品作りや独自のモノづくりが可能になっていきます。
そうなって初めて、デジタル化を進めることによって、本来モノづくりが強い日本が、世界をリードできる存在になれると考えています。
それは、必ずしも売上高や生産の規模でトップになる必要がなく、より低コストだったりエコであったり、他にはない個性を持った唯一無二のモノづくりができれば、それは素晴らしいことだと思います。
そういった世界を実現するために、必要なサービスを提供するパートナーとして、フツパーはこの製造業という分野におけるAI会社のトップを目指します。
シンプルに、フツパーの事業が伸びれば、世の中全体がよくなる、そんな世界を目指していきたいです。