2022/07/06
髙木 真一郎 取締役/CFO(最高財務責任者) 兼 管理本部長
京都府出身。同志社大学在学中に公認会計士試験に合格し、新卒であずさ監査法人大阪事務所へ入所。上場会社、IPO準備会社、IFRS適用会社の監査やIFRS導入、内部統制構築アドバイザリー業務等に従事したのち、事業会社にて執行役員経理マネージャーとしてマザーズ上場に貢献。2022年1月よりCFOとして当社に参画。
公認会計士の方のキャリアはさまざまかと思いますが、髙木さんが監査法人を退職し、事業会社で働こうと思ったのはなぜですか?
監査法人で働いていると、外からたくさんの会社をみることができるのですが、どうしても経理という一側面が中心になりがちで、その会社のビジネスを人に説明するくらいはできても、その会社の根本を理解したり、強み弱みを知るのが難しいんです。
でも今のように一つの会社の中に入ったらいろんな職種の人とお話しするし、じっくり関わることができる。コーポレート部門として全部署の人と仕事をするようになるわけです。
つまり一つの会社で働くことで、会社全体の良いところ、悪いところを自分で見て知ったうえで会社に関わっていきたいと思ったのが事業会社で働くことを選んだ理由です。
前職のベンチャー企業で上場を経験されていますが、そこからフツパーに転職しようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか。
前職も上場に向けて働いていたのは同じなのですが、その会社は自分が入った時点で既に会社の事業は結構出来上がっており、後は体制を整えれば良いという状況でした。
なので次は事業作りから関わってみたいという想いがありました。フツパーは今から大きくなっていく会社で、いろんな仕組みや事業の根幹をこれから考えていかなくてはいけません。それが難しくもあり楽しくもありますね。
成熟していない会社でやってみたいという中で、フツパーを選んだのはなぜですか?
転職活動する中で、決めていた3つの軸にフツパーがマッチしていたからです。
その軸の1つは、自分が投資できる会社かどうかということです。
転職活動は、働きに行くというより、自分のスキル・時間・お金を投資する感覚で進めていました。投資できる会社かどうかは、いいプロダクトか、ちゃんと伸びる事業かという観点で見ていて、フツパーには投資したいと思えました。
次に、社会の課題を解決している会社かということです。
単に稼げば良いというわけでなく、本当に社会が直面している困難を解決できる事業を選びたいと思っていました。フツパーの事業は人手不足で困っている中小企業の問題を直接解決できます。きっとこれからの日本でフツパーのようなサービスはすごく価値があるものになっていくと感じました。
フツパーのプロダクトがあれば、今まで検品業務をしていた人が違う仕事ができるようになるかもしれない。事業拡大をしようとしても人手が足りなくて生産ラインを増やせない会社の解決策になるかもしれない。社会の課題にクリティカルに答えている会社だと思います。
最後の軸は経営者が誠実に事業をやっているかです。
面談で話をする中で、社長をはじめとした創業メンバーが誠実に事業に向き合って謙虚に事業を進めていると感じました。やはり誠実さがないと会社はうまくいかないと思っています。
東京に比べてベンチャーが少ない大阪で転職活動をしているなかでこの軸にマッチしたのがフツパーでしたね。面接を受けたのもフツパーだけで特に他の会社の選考は受けずに決めちゃいました(笑)
髙木さんはCFOとしてコーポレート部門で働いていらっしゃいますが、コーポレート部門のフツパーでの役割はどういったものでしょうか。
会社にはいろんな部門や職種があって、そしてそれぞれに目標や仕事の流れがあるのですが、そこを繋げるのがコーポレートの大事な仕事です。
エンジニアや営業など、製品やお客様の状況を一番わかっているのはその部門の人なので、皆を信じて各部門の仕事を進めてもらいます。
しかし、それだけでは部分部分で最適だったとしても、会社全体としていい方向に行くとは限りません。
今のフツパーの規模だと全員が顔を合わせているので、そこまで偏ることはありませんが、会社が大きくなればなるほど部門ごとにセクショナリズムが出てきてしまう可能性があります。
そこでコーポレートはどの分野とも関りがある一番全体を見渡せる職種として、会社全体が良い方に向かえるようにもっていく、分断されないように繋げていくことが大事な役割になると思っています。
部門ごとの最適を優先していると会社としてのバランスが悪くなってしまうのですね。部門を繋げるために具体的にはどういったことを行うのですか?
会計や経理として正しいデータを提供したり、会社内の仕組みやルールをつくるといったことですかね。
正しいデータを出すっていうのは、会社として正しい行動や結論を出すための客観的な材料を提供するということです。社内外問わず、同じ課題や目標に向かうためには客観的なデータが必要ですし、どれほど真剣に検討分析をしても、そもそもの数字が正確じゃなければ正しい答えが出るわけがありません。正確なデータを素早く共有するというのはコーポレートのとても大切な仕事ですね。
ルールに関しては、「上場するためにやらなくちゃ」とか、「普通こうだよね」という理由ではなく、あくまで「上手く案件が流れていくため」「意思決定の速度をあげるため」にどうすれば良いか、きちんと意味のあるルールを作りたいと思っています。
ルールづくりは会社ごとに大きく異なるものなのですか?
法律や会計基準のように、当たり前のルールには会社として当然対応するとして、会社のルールは扱っている物や会社の規模によって大きく変わってきます。
例えば今のフツパーの規模だと、一度に同じものを大量に仕入れたりすることはないので大規模な購買管理システムは入れていません。
一方である程度大きな製造業のような会社では、毎日大量に仕入し現場に投入しなくてはならず、購買管理システムを導入して購買のフローをもっと厳格にしないと管理不能になり、部材の不足・過剰による機会損失の発生、非効率につながってしまいます。
このように活動のボリュームによってルールやシステムは変えていかないといけないんです。もちろんフツパーもずっと今のルールのままで良いわけではなく、ここからさらに大きくなっていったら新しい仕組みをつくらないといけないです。
コーポレートというと、会計や予算の管理など、きっちりしたお金の管理というイメージでしたが、仕組みづくりという役割もとても大事なのですね。
そうですね。もちろん会計をきっちりやるっていうのもとても大事な役割ですよ。
重大な横領や粉飾決算が起こるとか、会計をきっちりやらないと会社が一発でつぶれるリスクがあります。それだけは防がないといけないですね。コーポレートの一番大事な仕事は会社を守ることだと思っています。
そこには会計士としての経験が活きているなと思います。会計士のときは基本的にその会社のルールが大丈夫かを評価するのが仕事でした。たくさんの会社を見ていくうちに、自分の中で、ここまでできていたら大丈夫という判断軸というか、ものさしができたんです。
上場の審査通るかどうかっていうのは、加点方式じゃなくて減点方式だと思っていて、「ここまでできていたらいい」ではなくて、「こうあるべきだよね」っていうのを理解したうえで、そこから個々の事情を考慮していって、最もリーズナブルな体制を作れるかだと考えています。
「こうあるべき」というものさしを会計士時代の経験で作ることができたので、今は会社の実情に合わせて、どういう形が一番効果的で効率的かを試行錯誤しているという感じです。
それが常に正しいわけではないというのは重々承知していますが、そのものさしを最初から高い位置に設定しておけば周りからもちゃんと評価してもらえると思っています。
CFOとしての髙木さんのお話もお聞きしたいです。
CFOとかコーポレートというポジションは守りのイメージが強いけど、CFOの役割は企業価値を上げるというものもあります。こちらは守りというより攻めですね。
企業価値を上げるというのは具体的にはどういったものなのですか?
ひとつは社会や会社の状況をただしく把握し、どうすればこの会社が利益出るかを考えていくことですね。
実際に事業を進めるにあたって、予算とか中期経営計画をつくってるんですけど、私の仕事はみんなが考えるものを実際に数字に落とし込んで見える化していくことだと思っています。
最初に言ったように、その部門のことはその部門の人が一番わかっていると思います。
例えば、こういう風に売っていけばこのぐらいの売り上げになるよね。今の会社の実力なら、このくらいの売り上げを目指すべきだよねっていうのは実際に営業をしているビジネス部門の人が考えるべきだし、こういうプロダクトが必要だからこういう研究が必要で、そのためにはこのくらい開発費にお金を使わないといけないっていうのはエンジニアが考えることだと思っています。
私の仕事は、それに対して会社全体としてどういう数字になるか、どうすれば企業価値があがっていくのかというのを、何度も皆とアイデアを出し合って練り上げることです。
独りよがりの計画を作って、皆に「はい、これでやってください」というやり方であったり、逆に各部門の数字を足すだけで会社全体で横断して検討していないと、魂のない数字になってしまうんです。
各部門が自分が正しいと思っている数字を提案して、みんなと議論を重ねて会社全体として目指すべき数字に落としこむことで、会社全体がコミットできる生きた数字となり、全員が本気で事業に取り組めるのではないでしょうか。
また、よりスムーズに会社が回るルールをつくることで、みんなが効率的に働けるようにする。その結果企業価値を上げることも「攻めの管理体制作り」と言っていいのかなと思います。
全員で企業価値を高めていこうという中で、今後のフツパーの展望をどのように考えていますか?
ものすごく可能性が広がってると思います。今はどんどん人やビジネスの規模が拡大しており、「会社」という組織になっていっています。
ベンチャーのフェーズで言うとシードからアーリーになってきたということですね。種から芽が出て事業が育ってきたという感覚はみんな持っているのではないでしょうか。
こうなってくると組織として動いていかないといけないし、ゆえにそこからルールとかもちゃんと考えていかないといけない。でもルールは縛るためのものというより、みんなで同じ方向を向いて進むためのものなので、そこはみんな納得感のあるものをつくっていきたいですね。
急拡大していく中で、会社としての課題がどんどん出てくると思うのですが、ここを乗り越えたらぐっとスケールできるのではないかなと思っています。
フツパーのメンバーは皆、自分の仕事に極めて真摯に取り組んでいます。これを同じ方向を向いて続けていければ、すごく強い会社になると思いますし、上場も、その先もそんなに難しい話ではないと思います。
皆の力をうまく活かせる、同じ方向を見て頑張れるルールづくりが、人が増えていく中でより一層重要になるのですね。
そうですね、でもルールっていうのは作るよりもやってもらうのが大変なんです。作るのは簡単なんですけど、やってもらうのは大変で、なぜこのルールが必要なのかをきちんと説明する必要があるのと、そもそも自分がルール作りを間違えている、つまり会社に合わせたルールが作れていない可能性があるので、みんなの意見を聞いて状況を理解する必要があります。
そして、皆が納得して守れるルールを作っていけたら強い会社になっていくと思います。
それぞれがアイデアをだして、みんなで議論して決めたルールは、みんなもその過程で趣旨を深く理解してきちんと守ってくれます。でも、だからこそルールがスッと決まることはないですね(笑)
今からどんどん人が増えていくということですが、髙木さんが思う今後フツパーに入ってきてほしい人はどのような人でしょうか?
能力とかスキルよりも会社に合う人かな。
コーポレートとしては、全体が一番よくなる方法を考えられる人が必要だと思います。能力、スキル以前に会社のことを深く理解して、会社全体にアプローチできる人がいいんじゃないかと思います。そのために、自走できたり、自分で課題を見つけてこなしていく人は大歓迎です。
そういう人が会社をバックオフィスとしてぐっと前へ押し出していってくれるのではないでしょうか。
全体を見る力はどういう場面で現れるのでしょうか。
どういう経験をしましたか?って聞いたときに、自分の担当している業務を効率化しましたっていう話をする方は結構いらっしゃるのですが、あまりそこは求めていないです。
それよりも、それよりも自ら会社の課題を見つけ、周りを巻き込んで解決してきた人がいいですね。
コーポレートとして入社するなら、俺が私がっていう人より、全体を優先できる人が来てくれるといいかなと思いますね。今はみんなで会社を大きくしていくぞというときなので。
髙木さん自身の今後のキャリアの展望を聞かせてください!
フツパーでは、上場させたいっていうのは当たり前ですが、その先の景色を楽しみにしています。
と言いつつ、実はこういうキャリアを作っていきたいっていうのは特にないです。
社会人になって10年ちょっと経ちますけど、10年前に自分がここにいてベンチャーのCFOをするなんて思ってなかったですし。会計士試験を受けたのも21歳の時ですが、受験する2年前まで会計士という仕事の存在すら知らなかったです。なので、どこかで仕事した結果としてキャリアがあるだけで、こういうキャリアを歩みたいというのはないですね。
ただ長期的な目標として、常に成長企業に関わって、たくさんの会社を伸ばしていけるような人になりたいですね。