概要
フジッコ株式会社(以下「フジッコ」)と株式会社フツパー(以下「フツパー」)は、佃煮および惣菜製品の外観検査をAIに代替し、検査工程の自動化を実現した。
老舗食品メーカーが目指す「従業員の残業ゼロ」と「24時間無人稼働の工場」の実現に向け、人の目に頼っていた検査工程を自動化し、生産性向上と品質安定の両立を図る。
開発背景・課題
佃煮・煮豆のトップメーカーとして知られるフジッコでは、全社的に「従業員の残業ゼロ」を目標に掲げる中、目視検査による生産性のボトルネックが課題となっていた。
目視による検査は、1分間におよそ40個が限界で、この速度がボトルネックとなり、ライン全体の生産数が決まってしまっていた。また、ヒューマンエラーによる不良品の出荷があってはならないと、生産性と品質管理の両面での課題を挙げている。
さらに、人による検査では個人差による精度のズレが避けられず、新しい検査員への教育レクチャーにも多大な時間と労力を要していた。
検討段階から、具材噛み込み、製品の見栄え、印字かすれなど、10を超える多様なテーマが挙がるなど、全社的に検査自動化への期待が高まっていた。
機能概要
外観検査AIは、搬送中の佃煮および惣菜製品をカメラにて撮影し、その撮影画像に対してAIによるNG判定を行う。NG判定された製品は既存の排除機構と連携し、自動排除が可能である。
検査対象製品
- 佃煮製品(具材の噛み込み、蓋ズレ、二重容器等)
- 惣菜製品(具材の噛み込み、フィルムのズレ等)
検査項目/工程
- 佃煮ライン: 上部カメラで具材の噛み込み・蓋ズレ、側面カメラで二重容器を検査
- 惣菜ライン: 上部カメラで具材の噛み込み・フィルムのズレを検査
- 検査装置設置箇所: 各既存製造ライン
導入の決め手
フツパーを選定した理由について、手厚いサポート面でのメリットや限られたスペースに合わせて、省スペースでの設置が可能な技術力を挙げている。
また、日経新聞の掲載記事をきっかけに、単にツールを導入するだけでなく、ノウハウを吸収し、全社にも展開していきたいとフツパーとの協業に対する期待も高まった。
導入効果
導入後の効果は明確な数字として現れている。
現状、1ラインあたり1.5人の省人化を達成。これまで検査を担当していた従業員の負担を軽減できたことも、非常に大きな成果だと担当者は評価する。
惣菜ラインでは、AI構築が完了し排除連携も実施。現在、目視検査員を外す運用を開始しており、省人化を達成している。
佃煮ラインにおいては、複数ラインで段階的に導入を進めており、具材の噛み込み検査をはじめ、蓋のズレや二重容器の検査など、多様な不良パターンに対応するAIを構築し、検査自動化を達成している。
導入当初は、検査精度の調整に苦労したという。人が目で見ていた「いい塩梅」をAIに学習させる過程では、見落としや過検出といった課題にも直面したが、現場の検査員や品質管理担当とフツパーで調整を重ね、精度を高めることができた。
結果として、人による検査精度のズレというリスクが解消されたことは大きな成果である。検査員の個人差や体調による判断のブレがなくなり、安定した品質管理が実現した。また、新人教育にかかる時間と労力の削減という長期的な効果も見込まれる。
さらに、原材料費や人件費が上昇する厳しい経営環境において、生産コストを削減が期待できる省人化は、価格を上げないための企業努力として重要な意味を持つ。検査という精神的・肉体的に負担の大きい作業から従業員を解放し、より付加価値の高い業務へシフトさせることで、「従業員の残業ゼロ」の実現に向けた大きな一歩となった。
今後の展開
現在の成功を受けて、フジッコでは積極的な展開を計画している。同工場内の他ラインへの展開をはじめ、有色容器対応など技術的な課題解決にも取り組み、全社的なAI検査システムの拡大が着実に進んでいる。
佃煮・煮豆のトップメーカーが描く「未来の工場」の実現に向け、フツパーは技術と知見を提供し、その挑戦をサポートし続ける。
食品製造業におけるDXの推進は、安全・安心の食文化と工場の持続可能な運営を支える上で重要な役割を果たすと考える。フジッコの社是である「創造一路」のもと、常に新しい価値を創造し続けるフジッコの取り組みは、変化する経営環境において成長の芽づくりに挑戦する姿勢そのものである。これからも「おいしさ、けんこう、つぎつぎ、わくわく。」の企業スローガンに込められた未来づくりへの決意とともに、持続可能な社会の実現に貢献するテクノロジー活用事例となるに違いない。
社 名:フジッコ株式会社
設 立:1960年3月
事業概要:各種食品(佃煮、惣菜、漬物、煮豆、その他)の製造販売
社 員 数: 1,500名(グループ全体)
会 社 H P:https://www.fujicco.co.jp/