ロート製薬・再生医療事業開発部様|人員配置最適化AIシステム「スキルパズル」導入事例
極めて高い専門性と緻密な工程管理が求められるロート製薬・再生医療事業開発部(以下、「同社」)。複雑な作業に対し、スタッフのスキルや勤務形態を考慮した「人員配置」は、特定の管理者にしかできない「熟練のパズル」となっていました。
しかし、この課題は再生医療の現場に限った話ではありません。スキル・資格・勤務条件・作業負荷など、複雑な要件を抱える現場では、多くの企業が同様の悩みを抱えています。毎月多くの工数を費やしていたシフト作成・人員配置業務。AIで自動化を図る「スキルパズル」の導入は、現場のリアルな制約条件と一つひとつ向き合うことから始まりました。その徹底した調整の結果、現場には3つの大きな変化が生まれました。
- 付帯作業の削減|配置時間75%減で、本来の業務に注力
- 熟練作業の標準化|特定者しかできなかった配置が、誰でも対応可能に
- 精神的負担の軽減|「明日どうしよう」のプレッシャーから解放
今回は、導入検討・運用に携わる4名の方にお話を伺いました。

再生医療事業開発部 セルファクトリー京都
生産技術グループ リーダー 山本 様

再生医療事業開発部 セルファクトリー京都
生産技術グループ 中村 様

再生医療事業開発部 セルファクトリー京都
製造グループ 金子 様

再生医療事業開発部 セルファクトリー京都
生産技術グループ 早川 様
導入前の課題:シフト作成・人員配置の属人化と業務負担
属人化した「頭の中のパズル」とスキル管理の限界
再生医療の製造現場では、工程の内容や必要なスキルが日々変動します。スタッフ一人ひとりが習得しているスキルも異なり、資格が必要な業務とそうでない業務、工程の難易度や作業環境の負荷など、複数の要素を同時に考慮しながら人員配置を組む必要がありました。
「以前は、Excelで数式を駆使して配置計画を立てていました。誰がどの資格を持っているか、誰が休暇を取るか、作業の偏りがないか…。スキルマップもExcelで管理していましたが、これらすべてを頭の中でパズルのように組み立てていたんです」
そう語るのは、シフト作成・配置業務を担当していた早川様。翌日の作業工程が決まった後、誰をどこに充てるかを決めるのに毎月多くの工数がかかっていたといいます。
再生医療の製造現場においては、工程ごとの必要なスキルの制約や勤務条件、負荷の分散などを考慮すると、配置作成は一筋縄ではいきません。結果として、特定の管理者の経験に頼らざるを得ない「属人化」が課題となっていました。また、極めて高い専門性と緻密な工程管理が求められる再生医療の現場。一人ひとりのスキルや資格、作業負荷が複雑に絡み合うため、わずかな配置のアンマッチが品質や安全性に直結しかねない、常に緊張感の漂う環境でした。
見えない負担と精神的プレッシャー
時間がかかるだけではありませんでした。この業務は特定の管理者にしかできず、その担当者が不在の際の対応が困難でした。完全に「属人化」していたのです。
「メールでメンバーの予定や出勤情報の情報収集に約1週間、Excelで組むのに数時間。そして、現場から『なぜ私ばかり大変な工程に入るのか』という声が上がれば、さらに数時間かけて組み直す…。これが日常でした」
複雑なパズルを解くような作業が、本来注力すべき品質管理や改善業務を圧迫し、「明日どうしよう」という管理者の精神的プレッシャーも、決して小さくはありませんでした。
導入の決め手:現場のルールを汲み取る柔軟性
フツパーとの出会い
スキルパズルのモニター導入のきっかけは、以前から別件でフツパーと協業関係にあったことでした。
「フツパーさんとは、画像検査の件で以前からお付き合いがありました。単にツールを売るのではなく、私たちの課題に寄り添ってくれる姿勢が印象的でした。今回も、モニターという形で開発段階から一緒に取り組めるというお話をいただき、『これは面白い』と思いました」(山本様)
現場ならではの「リアルな要件」を拾ってくれる柔軟性
従来のロジックベースの配置システムでは、条件が複雑になりすぎて成立しないケースがありました。必要最低限の条件で最大の効果を出すには、AIのような技術が有効――そう考えたものの、重要だったのは「現場のリアルな制約条件を、どこまで柔軟に設定できるか」でした。
- 「この人は午前のみ出勤」
- 「過酷な環境の工程に同じ人が連続で入らないようにする」
こうした”現場ならではの泥臭いルール”を、スキルパズルは一つひとつ汲み取ることができました。
「配置が特定の個人に集中するのを避けるための”ランダム性”――つまり、平均的にバランスを取る機能が強く欲しかった。AIなら、人間の意思ではなく客観的な基準で公平に提案してくれる。その期待が、導入を後押ししました」(金子様)
導入プロセス:暗黙知を言語化する挑戦
モニター期間という「開発段階から入る」体験
スキルパズルの導入は、通常の製品導入とは異なり、モニター期間からのスタートでした。つまり、開発段階から現場の声を反映させていく、共創のプロセスでした。
「正直、最初は『まだベータ版だな』という感想でした。UIの使いづらさやバグもありました。ただ、一方で『こうやって開発って進んでいくんだ』という経験ができたのは面白かったです」(金子様)
「AIなら何とかなる」ではなく、「どうすれば活きるか」――導入成功の鍵
再生医療の人員配置は、単純なロジックでは解ききれない複雑さがあります。だからこそ、「AIに任せれば自動で最適解が出る」というイメージでは、うまくいきませんでした。
「正直、”スキルパズルで自動化は難しいのではないか”というところまで行きました。でも、ただ『難しい』で終わらせたくなかった。何が足りないのか、どうなれば仕組みとして成立するのかを、一つひとつ言語化していきました」(中村様)
AIを”魔法の箱”として扱うのではなく、現場の暗黙知をすり合わせながら、ルールや重み付けを調整し、運用を磨いていく。どのような機能で揃えれば実運用できるのか――その判断ができるレベルまで、要件を落とし込み、この発展途上のシステムを「しっかり評価すること」にこだわる。そのプロセスこそが、今回の導入成功の鍵でした。
「この課程で本当に必要な要件と、そうでない要件(運用でカバーできるもの)の判別ができました。この見極めが、今回の採用につながったと思います」(中村様)
そこにはフツパーの粘り強さと中村様を中心に、現場の早川様、金子様がしっかりと検証をやり切った努力と、その中で培った「ツールをうまく使いこなす現場力」が活きたのだと、山本様は語ります。
導入効果:配置時間が75%削減、精神的負担からの解放
現場のリアルな要件と向き合い、粘り強く調整を重ねた結果、3つの大きな変化が生まれました。
導入前後の比較
| 項目 | 導入前 | 導入後 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 配置作成時間 | 数時間/月 | 数十分/月 | 75〜90%削減 |
| 計画担当者 | 特定者のみ対応可能 | 複数名で対応可能 | 計画業務の標準化 |
| スキル可視化 | Excel管理・手動更新 | システムで一元管理 | リアルタイム把握 |
| 配置根拠 | 担当者の経験と勘 | スキル習熟度・作業負荷・人的相性 など | 納得感向上 |
| 急な変更対応 | 数時間以上の組み直し | 数分で再計算 | 計画変更のストレス軽減 |
付帯作業の削減|配置時間75%削減で、本来の業務に注力
導入に際し、費用対効果を算出するため、人間 vs スキルパズル(AI)の対決検証も行いました。
従来手法:(事前の情報収集を除く)計画策定に数時間/月
導入後:(事前の条件設定を除く)AI配置および確認作業に数十分程度/月
の時間短縮を実現
削減率: 75〜90%
「配置業務にかける時間が減ったことで、本来注力すべき品質管理や改善業務に時間を割けるようになりました。急な欠勤や工程変更があっても、AIで再計算することで迅速に対応できるようになりました」
「この結果が、スキルパズル導入の判断を後押ししました」(山本様)
熟練作業の標準化|特定者しかできなかった配置が、誰でも対応可能に
属人化の解消も重要な成果の一つです。
「以前は特定の人にしかできなかった配置業務が、スキルパズルによって標準化されつつあります。まだ完全ではありませんが、日々の運用は誰でもできるようにしたい、という目標に一歩近づきました」
配置の根拠が明確になり、スタッフへの説明に納得感が生まれました。「なぜ私がこの工程なのか」という疑問に、客観的なデータで答えられるようになりました。
③ 精神的負担の軽減|「明日どうしよう」のプレッシャーから解放
時間短縮以上に大きかったのが、管理者の精神的負担の軽減です。
「『明日どうしよう』という管理者の精神的負担が大きく軽減されました。本当の意味で”人間にしかできない判断”に集中できるようになりました。」
成功の要因:使いやすさと費用対効果の両立
「使いやすさ」を重視したUI/UX
導入にあたって、山本様が最も懸念していたのは、新しいシステムに対するユーザーのアレルギーでした。
「機能がたくさんあっても、使いにくければ元も子もない。現場の人が『使いたくない』と感じたら、どんなに良いシステムでも意味がありません。使いやすさは大前提です」
スキルパズルは、現場での「使いやすさ」を重視し、継続的なUI/UXの改善を行っています。現場で実際に使う人たちがストレスなく操作できる――これが、属人化を解消し、標準化を実現するための土台となりました。
金額だけでは測れない価値
「費用対効果を工数削減の金額だけで測るのには限界があります。しかし、配置業務の負担が軽減され、本来注力すべき品質管理や改善活動に時間を割けるようになったことの価値は、計り知れません。」
スキルパズルの価値は、単なる時間短縮だけではありません。データの蓄積、育成の可視化、そして将来的な活用可能性――そうした「見えにくい価値」を含めて評価する必要がありました。
現場の違和感を一つひとつ拾い上げ、仕様やロジックを共に改善していく。この伴走型の支援が、3つの効果(時短・標準化・ストレス軽減)を実現する鍵となりました。
今後の展望:データ活用で、さらなる価値創出へ
3つの効果(時短・標準化・ストレス軽減)を実現した今、同社はさらなる価値創出に向けて動き出しています。
「メンバー数が増える中で、誰にどの経験を積ませるかという『育成の可視化』が重要になってきました。スキルパズルのスキルマップ機能を活用し、個人ごとのスキルレベルや配置実績を分かりやすく出力できれば、上層部への説明やメンバーとの面談にも役立ちます」
蓄積された配置データを活用し、どのスタッフにどの経験を積ませるか――そんな戦略的な育成計画への活用も広がっています。
さらに、医薬品業界特有のGMP(Good Manufacturing Practice:医薬品製造管理及び品質管理基準)への対応や、人員配置後に自動で工程の指図書に情報が入力されるようなシステム連携も視野に入れています。配置計画から工数管理、実績記録までがシームレスにつながる、真の製造DXの実現を目指しています。
まとめ:現場の声の反映が生んだ、3つの効果
本事例の成功は、単なるシステム導入に留まりません。現場が納得するまで要件を研ぎ澄ませた同社の「使いこなす力」と、現場の声をシステムへ丁寧に反映したフツパーの開発体制。この二人三脚の歩みこそが、現場へ劇的な変化を生み出す真の土壌となりました。
実現した3つの効果
① 付帯作業の削減
配置時間75%削減により、本来注力すべき品質管理や改善業務に時間を割けるように。
② 熟練作業の標準化
特定者しかできなかった配置業務が、誰でも対応可能に。配置根拠も明確化され、納得感が生まれた。
③ 精神的負担の軽減
「明日どうしよう」のプレッシャーから解放され、人間にしかできない判断に集中できるようになった。
専門性の高い現場に限らず、スキル・資格・勤務条件などが複雑に絡み合う現場では、人員配置は属人化しやすく、紙やExcel運用では限界が来やすい領域です。
だからこそ、現場のリアルに向き合う伴走型の支援体制こそが、ルーティーン業務の標準化と、人間が本来注力すべき業務への集中を実現する――そんな未来の現場像を示してくれています。
(本内容は2026年1月に取材した内容です)
社名: ロート製薬株式会社 再生医療事業開発部(ロートリサーチビレッジ京都)
創業:1899年(明治32年)2月22日
事業概要: 医薬品・化粧品・機能性食品等の製造販売
社員数:1,753名<単体>(2025年3月期現在)
会社HP:https://www.rohto.co.jp/